山本想太郎(やまもと そうたろう)

1966年東京生まれ。早稲田大学理工学研究科(建築専攻)修士課程 修了後、坂倉建築研究所に勤務。2003年建築家ユニット、プロスペクターを共同設立、2004年山本想太郎設計アトリエ設立。現在、東洋大学非常勤講師。INAX住宅産業フォーラム講師。『DETAIL JAPAN』誌技術翻訳総監修。主な作品に「水戸N邸」「国分寺の家」「板橋のリノベーション」「汐留プラザビル」など。主な著作に『テクトニック・カルチャー』(共訳、2002年、TOTO出版)、『現代住居コンセプション』(共編著、2005年、INAX出版)など
WEBサイト:http://park16.wakwak.com/~prospector/

9 13 2006

ディーテイル・ノート――断熱(2)

引き続き断熱の話です。前回、日本にはないいろいろな断熱製品や工法もある、と書きましたが、その例をいくつか挙げてみましょう。
まずDetail Japanの矩計図を見ていてよく見かけるのが、「断熱フォーム(水勾配)」というものです。水勾配状に厚みが変化する断熱フォームがあるということを、私はこの本を見るまで知りませんでした。ドイツを含む欧州ではほとんど一般工法と言ってよいもののようです。実は日本にもそのような製品があることはあるのですが、そもそも断熱フォームのメーカーがそんなに多くないなかで、いろいろな形状に対応して水勾配が作れるような状況には程遠いようです。もしかしたら、逆に日本の水に対する性能要求のシビアさから、このような製品が作られないのかもしれません。いずれにせよ屋上スラブの外断熱+防水は、もっともっと工法が洗練される余地があるような気がする分野なのです。

前回書いた「テラス状に張り出した外部空間と、室内部分のスラブが、完全に熱的に絶縁されている」部分についても、日本ではちょっと見られない断面詳細図をよく目にします。日本ではこのような外バルコニーは典型的な躯体ヒートブリッジとされていますが、その根元に断熱材を挟んで、しかもキャンティレバーとなっているのは、一体どういうことでしょうか。かなりの圧縮強度を持った断熱フォームは存在しますが、接合はどうなっているのでしょうか。実はこれはいろいろ巧みにごまかされていて、よくあるのは、目立たないようにバルコニーの先端部に支持構造があり、実際はキャンティレバーではないというもの(前回挙げたような事例)。比較的負荷の小さい部位では、貫通配筋くらいで持たせてしまっているものもあります(2005.12月号P47など)。さらには、ポストテンションを駆使した高度な構造設計でこれを実現したものもあります(2006.4月号P68--)。

そしてひとつの究極素材ともいえるものが「断熱コンクリート」です(2006.6月号P50—)。もちろん日本でもこの研究は継続的に行われています。先述した断熱キャンティレバーとともに、地震国日本の構造要求に耐える工法となるならば、いずれも建築表現の可能性を拡張させるものでしょう。

次回は断熱と開口部について書こうと思います。

17:52

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