
1971年、北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年、藤本壮介建築設計事務所を設立。主な作品は「伊達の援護寮」(2003)「T house」(2005)「情緒障害児短期治療施設」(2006)。現在、武蔵野美術大学美術資料図書館のプロジェクトが進行中
WEBアドレス:http://www.sou-fujimoto.com
先週の土曜日に、北海道伊達市に僕が設計した情緒障害児短期治療施設「バウムハウス」において、建築学会の北海道支部と東北支部が合同で企画してくださったシンポジウムに参加してきました。
東北大学の小野田さんと研究室の石垣さんが綿密に準備してくださり、設計者側からだけではなく、施設を運用されているお施主さん側、小野田さんが専門にされている建築計画側からの視点を交えて、この施設の良い点や問題点、そしてこれからの施設のあり方などを広く議論するものでした。天気があまり良くない中、たくさんの方々に集まっていただき、僕自身も非常に刺激を受ける楽しいシンポジウムでした。
関係者の方々、ありがとうございました。
この情緒障害児短期治療施設の設計を始めたときに、設計の手がかりがつかめずに小野田さんにご相談したのが、そもそもの始まりでした。そこで小野田さんと石垣さんの研究論文を紹介していただいたのですが、その内容が、まさに目からうろこというか、空間と場所と子供の生活と治療とが、分かちがたく絡み合いながら、しかし明確に使いこなされている情景が記述されていたのです。
それを読んで、僕なりに解釈し、さらに類似の施設を見学するなどして、自分なりの情緒障害児施設を構想していったという経緯がありました。
ですので、あの建物は、雑誌でプランを見ると、建築家の単なる表現、自己満足のような建築に見えるかもしれませんが、自分で言うのもなんですが、かなり綿密に、練りに練られているものなのです。もちろん僕たちがそれを練ったというよりも、その構想に共感してくださったお施主さんの皆さんと、いろいろと意見を出し合いながら、少しずつ完成していったものです。
そのような経緯があったので、小野田さんには是非見ていただきたいと思っていたのですが、今回それが実現し、喜んで下さっていたので、僕としても、ひとまず責任を果たしたという充実感がありました。
あの建物の面白いところは、そうやってさまざまな意見を吸収し、練りに練って作り上げたものであるにもかかわらず、そこにできてくる場所は、なにか、自然にできてしまったような、意図されざるさわやかさを保っているという点です。それはあのランダムな形式自体が持っている、両義性なのだと思います。どんなに人工的な、そして意図的なプロセスを経た後にも、そこに立ち現れる空間と場所が、原始的といえるくらいに意図のない、大昔からそこにあるような存在感を獲得できている。
10年後、20年後の姿を見てみたい建築です。
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