
1971年、神奈川県生まれ。1999年、早稲田大学修士課程(建築学専攻)修了。1999~2001年、日本女子大学住居学科専任助手、2004年同大学博士課程修了。学術博士。2005年4月よりドイツのドレスデン在住。活動範囲は、建築およびその周辺の取材・執筆、翻訳、ピアノ伴奏
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ヨーロッパの古い街並み=石畳。こういうオートマティックな公式は確かに正しい。パリの凱旋門周辺の石畳が数年前に交換されることになり外されて山積みにされた折、ナポレオンの凱旋を見守ったこれらの石畳が持ち去られないように24時間態勢で監視されたというニュースがあったように、歴史ある街に石畳はつきもの。観光用の馬車が行き交うと、「ああ、かつてはこういう音がしていたんだな」と心躍る。石畳の上をハイヒール履いて犬の散歩をするローマのマダム。ゼンパーオペラでオペラを鑑賞した後に余韻に浸りながら、街灯に照らされた石畳を歩いて自宅まで帰る…私はここドレスデンでこんな贅沢をしている。
観光だけなら石畳はステキだ。隙間にハイヒールがハマってしまう、メンテナンスがされていない凸凹の表現の場合には足首を捻挫しそうになる、車が通ればうるさい、車に乗っていてもビシビシと伝わる振動は不愉快だ。
少なくともドレスデンでは、ド観光地域以外にあるかつての石畳はアスファルトで覆われている。我が家のある場所は、観光の延長地域の真ん中にあり、祭だクリスマス市だと大賑わいになる地域に囲まれてはいるが静かである。前面道路は「幸い」にもアスファルトで覆われている。住んでいる家の前の道路が石畳なんて、実はステキなことではない。「見た目だけだよ」と今の人々は言う。アスファルトで舗装されると住人はホっとするのだ。
ある朝、カッポンカッポン!と乾いた甲高い音が聞こえてきた。窓から馬車が見えた。ちょうど祭の期間だったので、そのために出向く最中だったらしい。アスファルトなのにこの音。これが石畳だったらどうなってしまうんだ!とその時思った。
時々、アスファルトの破れ目からかつての石畳の表面が見える場合がある。当然のことながら、ドレスデンは石畳で全面覆われていたのであろう。毎日とんでもない量の車が通るようになった現在、アスファルトって、石畳って…。
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