
1971年、神奈川県生まれ。1999年、早稲田大学修士課程(建築学専攻)修了。1999~2001年、日本女子大学住居学科専任助手、2004年同大学博士課程修了。学術博士。2005年4月よりドイツのドレスデン在住。活動範囲は、建築およびその周辺の取材・執筆、翻訳、ピアノ伴奏
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ファサードだけ残してその裏側全て建替えするほど「古い建物」の保存に余念のないヨーロッパにあって、ベルリンは壁崩壊後に真新しい建築が雨後の筍のように建てられている。その中でも中央駅のオープンは近頃の目玉商品。日本大使館に行かねばならぬ用事ができたので、まずは「ご利用」ということでドレスデンからベルリン中央駅までの長距離列車利用客として中央駅に降り立ってみた。
中央駅の前身は1871年にオープンしたレルター駅で、1996年に着工し2006年5月28日に新装オープン。ベルリン在住の友人曰く「かつての面影なんか全くなくなった」というレルター駅改装を手がけたのが、国内外に花形的な大型プロジェクトを多数抱えるドイツでも最も精力的な建築家集団gmpのマインハード・フォン・ゲルカン氏である。5階建ての駅はヨーロッパ最大級で、全長321メートルのガラス屋根はこの駅の最大の見どころとなっている。
日本にも住んだことのある相方は「キョウト駅ミタイデス」と一言。ドイツ人の骨格のように大雑把なフレームワークに側面も天井もガラス張り。古典的なファサードに大胆なガラス窓というかつてのレルター駅には鉄骨とガラスによる新たな表現への歓びが溢れていたが、これではまるでヘアヌードが当たり前だと何に対してもエロスや甘美な色艶を感じないドイツのアダルト業界のよう。
余談だが、工事中から中央駅を巡るゴシップはにぎやかだった。鉄骨の一部が強風で落下して列車の発着駅が周辺駅に急遽変更になったこともあった。そして、設計を無視してドイツ鉄道側が勝手に天井の設計変更を行ったり、何やら設置したりしたことは建築家を激怒させ、ついに施主を訴えるという騒ぎに発展した。「金を出しているのはこっちだ」という態度の施主と、1つの作品として認められるべきだという建築家との対決は普遍性を持つテーマではないだろうか。結局、建築家側が認められ、建築が建築家の作品として尊重されたことを世に示すこととなった。
相方が東京に住んでいた時、職人肌のマスターがいるカフェに一緒に行ったことがある。注文したウィンナーコーヒーにはスプーンがついていなかった。尋常ではない砂糖を入れるコーヒーが好みの相方は「スプーンを下さい」と店員に何度も頼んだが、「その甘さで飲んでいただきたいので…」と譲らない。結局彼のとった行動はシュガーポットのスプーンで砂糖を入れてかき混ぜるという暴挙であった。もう8年近くも前の出来事だが、中央駅の写真を撮っている時に鮮明に蘇ってきた。
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