
1971年、神奈川県生まれ。1999年、早稲田大学修士課程(建築学専攻)修了。1999~2001年、日本女子大学住居学科専任助手、2004年同大学博士課程修了。学術博士。2005年4月よりドイツのドレスデン在住。活動範囲は、建築およびその周辺の取材・執筆、翻訳、ピアノ伴奏
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ドイツ人は隙間風を嫌う。
貧乏ったらしいイメージそのものらしい。
ハーフティンバーの美しい木造の民家は、いかにもドイツらしい特徴のある住宅としてどの街でも大切な観光名所として修復され保存されている。しかし、このような民家は常に隙間風との戦いであり、現代の人々はあまり住みたがらない。暗く冷たく長いドイツの冬を耐え忍ぶ歴史の中では、人々は戸棚の中にベッドがあるような家具で寝たりベッドに天幕を垂らしたり、隙間風と寒さ対策に余念がなかった。
ドイツの建物は、1948年以前に建設されたものを「アルトバウ(古い建物)」、それ以後のものを「ノイバウ(新しい建物)」と呼ぶ。アルトバウは水道・電気・暖房などの諸設備や壁紙等がリノベーションされ、さらに窓も取り替えられている場合が多い。風を取り入れると同時に風を遮断するという両極端の機能を担う窓には、人々の葛藤が垣間見られる場合がしばしばある。
この写真は、エルベ川沿いに数キロにも渡って開催されるフェスタがあり、村から村へと続く道を歩いた時に見つけた家である。
ごく普通の民家なのだが、1階と2階の窓が違う。2階の窓は、40センチほどもある壁厚を利用して外側に外開き、室内側に内開きの窓が取り付けられている。各窓は1枚ガラスなのだが、2枚の窓を取り付けることによって風や寒さを防いでいる。一方、1階の窓は典型的な現代のガラス窓であり、ダブルガラス構造。密閉性は驚異的で、ガチャン!と締めてハンドルを回すと隙間風どころか音も漏らさない。内側に大きく開けることもできるし、上部だけを内側に傾かせることもできる。これ1枚で隙間風も雨漏りも解決でき、広い視界まで得られるのであればこんな快適なことはない…まさにドイツ人の長年の願いだったのだろうか。
2階の窓の場合、窓枠が素敵なのだがその窓枠が邪魔してすっきりとした視界を得ることはできない。外気を取り入れる場合は2枚の窓を開けなくてはいけないし、強風の時は外側の窓を閉めなければ風に煽られてしまう。「素敵ね」と思わせるのは明らかにこちらの窓なのだが、住人にしてみたら日常生活はラクしたい。
昔ながらの窓枠にも関わらずダブルガラスがはまり、接合部がパッキン仕様の窓もあるのだが、彼らが理想とする「完璧な隙間風の遮断」には至らない。
美しいハイヒールは長時間はいていると痛くなる。年代モノの車はよく故障をする。美と伝統は、忍耐と手間の賜物というのか引換えであるように、窓1つにも古い家に住み続ける住人の我慢や妥協の限界が見える。
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