有馬裕之(ありま ひろゆき)

1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、1990年、有馬裕之+Urban Fourthを設立。 主な作品に 「MA」「太宰府の住宅」「introspective」「ab」「second plate」「studio D」「M/異化された場」。 現在、コンセプトプログラム「earth lounge」を進行させている。

Dec 11 2007

暴走

久しぶりに叡電に乗った。
三十三間堂横のホテルから七条の駅に行ってそれからそのまま出町柳で乗り換える…というルートである。
電車は一乗寺、岩倉から二ノ瀬を過ぎて…ゆっくりと走る。
外の流れている風景は美しい。すばらしいパノラマが連続している。

電車内はたくさんの人で溢れていた。
最初全くいなかったが、どんどん乗り込んで出発直前にはラッシュ時の通勤電車並みの混み方になった。
それにしても、老人が多い。若いカップルなどほとんど居ない。
乗ったタイミングによるのかもしれないが…いつもそうなのか?…と思わせるぐらいにたくさんのおばあさんおじいさんが乗っている。
この車両は椅子が回転式で外の景色をより積極的に楽しむ事ができる。
椅子に座り/通路に立ち/ドアによりかかり…外の景色を眺めながら、老人達がとにかく大きな声でしゃべっている。
騒がしくうるさい状況。小学生の集団のような喧騒。
皆なにかを主張して、いつものうっぷんを晴らすかのような大声だ。
聞き耳をたてると話している内容はとりとめの無いもの。
「主張」と言うよりも「聞いてもらいたい」…いつもは話せなくてここぞとばかりに言いたい事を大声で話している…そう思えた。
鞍馬の駅の一つ手前の貴船口に電車は停まった。
老人達が大量に降りはじめた。ここから歩いて自然を楽しむことが定番なのだろう。
しかし、この車両の運転士は一人だけ…多量の切符の受け取り…乗降の誘導をしている。
しかしその誘導のままに老人達は動かない…運転士は困っている様子だ。
突然、電車の警笛が大音量で鳴りわたった。
ホームから人が溢れ出し線路にまで飛び出し反対側から来た下りの電車が急ブレーキで止まった。
列車の中からおばあさんがキレて怒鳴る。「危ないよ!危ないよ!なにをしてるの。」
線路に飛び出した老人達はただ騒がしくしているだけ。
わいわいと皆で同じ方向を向いて動いている。
頭の中にある妄想が涌いて来た。急に、老人達がこの鞍馬の山の中で孤独を癒すために
放浪しているように感じ始めた。
街中で居場所が無く彷徨い続けるおばあさんおじいさんでは?
最近読んだ本の影響かもしれない。
「暴走老人」藤原智美:夏に彼と食事した時に老人のことを書いていると聞いた。
「老人達がきれている。今は若者よりも老人のほうが暴走している。」と書いている。
「新」老人達が溢れていて、その行き場の無いのが現代の社会なのだ…と。
「時間」「空間」「感情」…足かせのような過剰性がすでに溢れ右往左往しながら生きているのが
我々なのだ。

妄想は膨らむ。
鞍馬に溢れているこの老人達もそうだろう…と。
行き場の無い街の雑踏から離れて群れてここでなにかを発散させている。
山の中を放浪しながら、たまったうっぷんを晴らしている。
そしてこの自然の中で放浪し過激にわがままを言い合い、暴走している。

老人達が降りると極端に人が少なくなった。
先ほどの喧騒が嘘のようだ。おばあさんおじいさんの集団が幻のように思える。
ふと我にかえると電車が動き始めていた。すぐに終点の鞍馬だ。
「孤独は山になく、街にある。
一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の”間”にある。」
という三木清の言葉が涌いて来た。

9:23 AM

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