有馬裕之(ありま ひろゆき)

1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、1990年、有馬裕之+Urban Fourthを設立。 主な作品に 「MA」「太宰府の住宅」「introspective」「ab」「second plate」「studio D」「M/異化された場」。 現在、コンセプトプログラム「earth lounge」を進行させている。

Jan 16 2007

空想の空間

黒のソファーが置いてある。
座面の高さが丁度よく、ぼんやりしながら思いを巡らせてみるに好都合だ。
今年の年初もここに座り、これまで実現していない「空想の空間」について考えていた。

space in whiteは1997年にデザインし、そのまま実現の機会を失っている未完プロジェクトだ。
当初は福岡の集合住宅の庭、その後由布院の美術館で実施しようとしたが、紆余曲折あって保留になったままである。
機能は無く、訪れた人が森の中で、自然と向き合い、編集者/記録者/観察者の
それぞれの視点を体験するプログラム。
私にとってはこの空間はただ実現すればいいというものではなく
「完成させ」→「使用をオペレーションし」→「記録し」→「構成をさらに変化させる」という一連が
試行されてこそ意味があるので、その機会を探ってはいるのだがまだ実現にはなっていない。
考えてみると、私はこのプログラムを着地させる事無く「空想の空間」として
実現しないことで楽しんでいる。
まさに起きている現実と思い描いている理想との間のbetweenが心地いい。
そのようなプロジェクトがあることで現実が救われることがある。


space in whiteブログ.jpg

"L'Architecture consideree sous le rapport de l'art, des moeurs et de la legislation"
このルドゥーの建築書を手に取るとページをめくるたびに空想の空間について考える。
宮廷建築家、フランス革命、投獄、挫折、そして夢。
歴史の中で翻弄され書かれたこの本は彼の夢の王国なのだが、
そこには大いなる矛盾と、同時にそんなことに頓着しない精神力と情念を感じる。
さらに、これらの「空想の場」からは、
単なる夢だけではない彼の理想性が生み出した「システム」「インテグレート」が遠望できる。
夢想されたピラミッド型や球体などの幾何学的なデザインを用いた奔放な建築の群れ。


LEDOUX.jpg


そう言えば、昨年秋にLOSからマイケル・ウェブが訪ねて来た。
second plateでのセッションでは建物内を一緒に廻りながら、いろんなことを話し合った。
「各国を廻っている。面白ければ取材をしにどんなところにも行く。日本の次はベトナムにフライトする…。」
70歳の楽しそうな語り口だ…。
アーキグラムのメンバーだった彼の今の意図は取材ルポを通して建築をメディア化して発信すること。
夢の理想像を追い求めることのように思えた。
そこには「現実」と「空想」のbetweenに関わりたいという意図がある。
メディア性とはそうであるべきなのだ。60年代の革新のメタシステムを提示し続けたアーキグラム。
「空想の空間」において新しいテーマを見せたメディアとしての建築だ。
実現せず意識の中でその存在感を増し続けるプログラム。

今年はさらに現実と空想の狭間を求めて行ければ面白い。
部屋のこの黒いソファーの出番もまた連続する…。

7:00 PM

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