有馬裕之(ありま ひろゆき)

1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、1990年、有馬裕之+Urban Fourthを設立。 主な作品に 「MA」「太宰府の住宅」「introspective」「ab」「second plate」「studio D」「M/異化された場」。 現在、コンセプトプログラム「earth lounge」を進行させている。

Oct 21 2006

アカデミーと建築オーダー

朝、美しい青空が見えていたが、南から雲がわき出して来て、今は、雨がぱらぱらと降っている。
激しく強い風…。波が高い。
波頭が船着き場を濡らしている。

車の中では音楽が鳴っている。

旅先に来て見慣れない場所に立った時に、
まず新鮮さと驚きを感じるのだが、同時になんとも言えない揺らぎや不安感を感じることがある。
適当な言葉が見つからないのでうまく説明出来ないが、新しいものに臨場することで興奮し誘発するのだろう。
こんな日は特にそうだ。

助手席に土居義岳著の「アカデミーと建築オーダー」がある。
この数ヶ月、傍らに置いてそれをめくりながら思索を繰り返していた。
読み始めた最初は、ここに書かれているのは、
「古典を中心にした揺るがない価値観の構築…アカデミーの中でのデザインの動きをオーダー研究に
よって大局的に捉える」…のようなことだろうと思っていたが、そうではなかった。
面白いのは、その観点から最初から降りてしまっているということだ。
確定的に見えるオーダーの歴史の背後にある揺らぎ続ける現実…それを土居は「不可能性」と記述している。

手元に送られて来たのが約1年+α前で、強い興味を持たされたが、
パラパラめくっては書棚の中に戻すということを繰り返していた。
常に各地に旅を連続させているので、時には携帯してみようとしたが少々厚く重
いので断念していた。
旅の中で数冊の本と共に動き、中身を拝読し、加えて本のデザインを眺めること
でその感覚を身体に擦り込ませる。
そのような有馬的儀式で内容を体感していくということを無意識にしているが、
この「アカデミーと建築オーダー」はそれには不向きでトラベルエディションで
はなかった。
しかし、今日の移動はショートトリップ。この本の出番となりました。

土居義岳はライフワークとして「学としての建築」プログラムを遂行して来た。
今度会った時にその奥底にある思いをさらに詳しく聞いてみたくなった。
土居的論考による「時代」の中での「外在的側面」⇔「内在的理解」、不可能性ということ、
実は「揺らぎつつ」オーダーを整理して行ったことなどが淡々とした早さで展開する。
深く深く推論をめぐらした彼なりの到達点をここに見た。
磯崎が彼の論点に対して「制度としての建築」と言ったということも理解できる。

今、観察しなければならないフィールドは立体的に広がっている。
その中にいくつかのラグーンのような「島」があるように思う時がある。
「島」はフォーカスの当て方によって意味を変え、それによって現れたり消えたりする。
揺らぎを感じ受け入れながらその中を漂い、思いを込めて実践していくしかない。

時代のエピステーメーとどのように対峙するかを意識し、その意味で「島」を渡りな
がら社会との接点を、建築を通して揺らぎつつ確かめて行きたいと思っている。




アカデミー.jpg


3:40 PM

コメント




保存しますか?