
本名、内野正樹(うちの まさき)。1960年静岡県生まれ。82年に編集者となって以来、雑誌一筋。88年より建築の世界に入る。05年4月、DETAIL JAPANを創刊。現在、同誌編集・発行人
石上純也建築設計事務所による神奈川工科大学内の施設(工房)を、先週見学した。四面ガラス張りの平屋の建物で、床面積は約2,000㎡。建築要素としては、柱(305本!)が立ち並び、そこに何列かある細長形状のトップライトから光が射し込む、というごく単純な構成の建物だ。
しかし、ここにとてつもなく豊かな空間がある。林立する柱(フラットバー)は、よく見ると、それぞれが向きも厚さ(16~80mm)も異なり、ランダムに配置されている。その柱たちにトップライトからの光が当たる様は、森の中で、木洩れ日が木々の幹へと射し込んでいるかのよう。しかも、そうした情景が、歩を進めるたびにまったく新しいものへと変わる。さらに、比較的間隔の狭まった柱の間を通り抜けるときの感覚は、木立ちのなかを抜けて進むのと同じ感覚だ。
これは、もちろん、イメージとして自然を模したというものでもないし、自然のメタファーに満足しているのでもない。自然とある種の関係を保ちながらも、建築における新しい経験をつくり出している、そんな感触があった。自然と建築が出合い、共振する場としての作品……。
単純な構成ながら、これを実現するために、目くるめくような、厖大かつ繊細なスタディが行われたのだろうと思う。