DJ内野

本名、内野正樹(うちの まさき)。1960年静岡県生まれ。82年に編集者となって以来、雑誌一筋。88年より建築の世界に入る。05年4月、DETAIL JAPANを創刊。現在、同誌編集・発行人

Oct 24 2007

深キョンとアンナの『下妻物語』観ました

『下妻物語』をDVDで観た。ヤンキー娘とロリータの物語とは知っていたので(正直、両方とも得意なほうではない)、観るのはちょっと控えていたのだが、ある建築家の方にすすめられて観ることにした。

監督がCM出身の人と聞いて思わず納得の、デジタル感覚溢れた編集と色彩である。このデジタル感覚と漫画チックなコミカルさがうまく溶け合って魅力的な「オフビート」ムービーになっている。……これで大方説明がついてしまいそうな気もするが、実は見ようによっては二度、三度と楽しめる映画である。

それはこの映画の「ねじれ感覚」のせいだと思う。バロックでもゴシックでもなく、ロココを称揚しているところからしてすでにねじれが入ってはいるのだが、わたしは、この映画では男と女、つまり性が逆転しているのではないかと思う。土屋アンナ演ずるヤンキー娘は、実は男なのであり、ロリータ(深田恭子)に恋をしているのである。ヤンキー娘には、一応、本物の男への恋とその失敗というエピソードがあるのだが、土屋の役柄は男がすり替わったものだと思う。

これってハワード・ホークスじゃないか? ホークスの映画では、男が女装をし、女が男に猛烈にアタックをかける。ケーリー・グラントがその男を演じているわけだが、グラントが新聞の編集長役をやっている『ヒズ・ガール・フライデイ』では、原作(戯曲)の「フロント・ページ」の記者役を男から女に変更しているのである。

一方的に深田になつく土屋に対して、最初は迷惑顔の深田だが、最後には「会いたいよ~」と電話で呟き、土屋の深田に対する恋が成就する。ホークスの映画(『ヒズ・ガール・フライデイ』)で、男+男の組み合わせが男+女に変えられていたのが、この映画では、男+女であるべきはずのものが女+女となっているのである。そんなの勝手な解釈でしょ~と言われるかもしれないが、実は映画の途中で、レディースの頭をはる小池栄子が土屋に吐くセリフがある。「女っていうのは人前で涙を流しちゃーいけねえんだ」というのがそれだが、これって、フツーだったら女じゃなくて男でしょ~。

いまどき、男のヤンキーとロリータの恋物語なんて受けないから、女に変えてみただけなのかもしれないが、こういう視点で観てみると、さらに楽しめる。ちなみに、最後の乱闘シーンでは、ロリータがヤンキーを窮地から救い出す。つまり女性(どうみても喧嘩に弱そうな深田)が戦いに敗れた男(深田にとっての男=土屋)を大芝居を打って救い出すのですね。ここでもやはり、「ねじれ」が入っています。

背後に牛久の大仏様を臨む空き地で繰り広げられる乱闘シーンには、正直、こみ上げてくるものがありました。

10:48 AM

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